小中学校ではまず中国語・韓国語の学習を

 先月、公立小学校での英語授業を全国の自治体に認めることが政府の方針として表明された。しかし、小学校からの英語教育については、すでに英語の専門家からもいくつか反対の議論が出ており、そもそもなぜ英語だけが考えられているのかについて疑問がある。特に小中学生の段階では、英語よりも中国語や韓国語を学習する方が、メリットが大きいのではないだろうか。
 コミュニケーション論の立場から言えば、ことばの学習で重要なのは、早期から知識を詰め込むことよりも、さまざまな場面について、そのことばに関わる具体的な経験を積み重ねることである。
 その点でまず、「国語」としての漢字学習が、中国語および韓国語の学習に共通した経験となるのは重要である。同じ漢字でも言語によって意味や形態が異なることも多いが、むしろそうした広い視点から漢字を学ぶことは、学習動機を高めると同時に、日本語自体をさまざまな視点から見る目を養うことになるだろう。また、外国語の学習で漢字が有利に働くのは、その両方について学習した達成感を高めることにもなる。私自身、両言語を含めて5ヶ国語を学習した経験を持つが、日本語の知識が与える学習効率はたいへん実感しやすい。
 また、両言語については、日常生活の範囲内でネイティブ・スピーカーのことばに触れられる可能性が高い。近年は空路が整備された結果、地方都市でも両言語圏からの旅行客や留学生の数が増えており、地域的な偏りも少ない。また海外でことばを使う場合でも、英語圏に訪れるよりは、滞在する機会の多さや費用の安さは大きく有利となる。そして、日本各地で学習の需要が高まれば、ネイティブ・スピーカーの雇用が増え、知的な労働に従事しやすくなる。これは高い日本の生活費で苦学を強いられている留学生にとっても、大きな助けとなるだろう。
 逆に英語は、いかに国際言語といっても、小中学生の段階での達成感や、実際に使う機会や費用の面からすると、早期での学習効果がはっきりとしない。達成感の低い環境での機械的な早期学習は、現在の大人以上の苦手意識を早くに植え付けることにもなりはしないだろうか。
 むしろ国際言語という点でも、特に中国語は、3月2日までの本紙夕刊の連載にもあったように、各地でその広がりと重要性を増して来ている。また映画やテレビドラマなどで、韓流はいうまでもなく、中国語圏からの「華流」も注目されつつあるのは、早期の学習環境としても意味がある。親子や友人で話題になる内容が多ければ、それだけ自発的な学習の意欲も高まるはずだ。
 最後に何よりも、ことばの理解は、人々の間に相手についての理解をもたらす。特に現在、日本政府や閣僚によって、国家レベルでいわれのない緊張感がもたらされている中、われわれ個々人レベルでの交流と理解を促すことが重要だ。いまこそ、ことばのもつ大切な役割にあらためて注目すべきではないだろうか。

これなが・ろん
(2006.4.21 某新聞に投稿してボツになったものを修正)

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